投票にあたって参考にしてほしい、各種ボートマッチの比較について(前半)
2012年総選挙向けに公開されているいわゆるボートマッチとしては、今のところ毎日新聞社による「毎日えらぼーと」、日本政治.comの「政策マッチング」、及び私も制作を手伝っている「日本版ボートマッチ 2012総選挙版」の3つがある。
基本的に、たくさんの選挙に関わるシステムが出てくることは良いことだと思っている。今後、インターネットと選挙の関わりが深くなればなるほど、今後もさまざまな仕組みが登場し、今まで以上に、選挙の結果に影響を与えることも想定される。
その際に、ボートマッチの仕組みが適切なものかどうか?ということを検証することは極めて重要である。今のところ各ボートマッチの一致度ががどのような評価基準に基づいたものであるのかをよく検討する必要がある。
もっとも、実のところ、公平な争点の設定というのは難しいものである。私の手伝っている日本版ボートマッチワーキンググループ(WG)は、公約分析の専門家が企画しているものであるから、ある程度の公平性は担保できていると自負しているが、それでも、難しいものは難しい。(というか、本WGでは、私は争点設定を担当していないので、あくまで推測であるのだが。。。)
というわけで、上記のボートマッチシステムについて、投票に参考になるように、簡単に比較した記事を書いてみようと思う。
設定された争点の重複
まず、各ボートマッチシステム(以後VM)が採用している争点分野を比較してみよう。(実際には、各争点の表現はVM毎に異なっているが、おおよそ同じ分野や対象を扱っている場合に共通していると判断している。)
(なお、日本版VMは計25争点、その他は計20争点である。)
あくまで感覚的なものであるが、3つのVMで共通している争点が、今日メディアを賑わせていることは概ね妥当であると感じる。
質問のたずね方
一口にボートマッチといっても、選択肢の作り方(質問のたずね方)についても三者三様である。
毎日は自由文章による選択肢を質問毎に設置している。たとえば、
問4 消費税 社会保障財源にあてるため、消費税を2014年4月に8%、2015年10月に10%まで引き上げる法律が成立しました。この法律への考え方で近いものを一つ選んで下さい。
に対して
1.法律通りに引き上げるべきだ
2.引き上げは必要だが、時期は先送りすべきだ。
3.今の5%を維持すべきだ
4.税率を下げるべきだ
5.廃止すべきだ
といった具合である。このような作り方は、争点に応じて具体的な選択肢が作りやすいが、一方で選択肢の作りによって、かえってわかりにくくなる問題も生じやすい。実際にその影響がないとはいえない。
たとえば、話題を呼びそうな下記の争点がある。
毎日問14
日本の核武装について、あなたの考えに近いものをひとつ選んでください。
1.将来にわたって検討すべきでない
2.今後の国際情勢によっては検討すべきだ
3.検討をはじめるべきだ
4.核兵器を保有すべきだ
読み方によっては、段階的に核武装に向けて具体性を帯びているようにも読めるが、アンケートの設問の作りとしてはあまり望ましくない。1〜3までの項目が「検討」に対して問うているのに大して、4.の「保有すべき」かどうかという質問はいささか異質である。たとえば、将来的に保有すべきだと思っているが、諸外国との関係から、検討を控えるべきといった考えの人が答えにくい質問となってしまっている。
それ以外のボートマッチは、
日本版VMは各質問とも、「賛成」「反対」「わからない」の3択。日本政治は各質問ともユーザ側は「賛成」「やや賛成」、「中立」、「やや反対」「反対」からの5択、政党側は賛成、中立、反対の3択から選択されている。
このへんはユーザの好みが分かれるところかもしれない。詳しい人は5段階の尺度的な聞き方の方が答えやすいだろうが、普段政治に馴染みのない人にとっては、選択肢が少ないほうが良いだろう。
各政党の答え
各政党の政策位置(回答)をどのように設定するかはボートマッチにシステムにとって重要な問題である。
厳格に考えると、各政党からの正式な回答を持って政策位置を設定することが望ましいが、難しい場合もある。実際日本版VMでも、4つの政党からは回答が得られなかった。(12月10日現在)
日本政治は「各政党の回答は、政党のホームページに記載している情報、及び、政党への電話調査によって、担当者に確認したものを根拠としています。」とあるので、ある程度はVM作成者側で判断しているものと推測される。
もっとも、今回のVMで興味深い方法を採用しているのは毎日新聞である。
各立候補予定者のアンケート結果に基づき、各政党の公認候補者の集計結果を、政党の回答としている。たとえば、憲法改正について、民主党の立候補者の58%が「賛成」としている結果により、憲法改正を「賛成」とした有権者との一致度を58ポイントとする方法である。
民主党の憲法改正に対する態度がなかなか一意に決まらないことはよく知られているところであるが、このような争点に対する一致を計る指標としては、よくできている方法であると評価できる。
(もっとも、そこまでデータがあるのであれば、政党との一致度を計るよりも、選挙区を特定して選挙区毎に一致する候補者を示す方法も考えられるのではあるが。)
さて、長くなってしまったので、ひとまず本日はここまでにします。
次回は、各政党の答えがボートマッチシステムでどのように変わってくるのか、見てみたいと思います。