ウェブ世界をゆくと大学

ウェブ時代をゆく」を読了した。

ウェブ進化論を含めて、情報学部の学生は全員読むべきだと思う。
この本を読まない奴、こういう大事な本がいま話題になっていることすら知らない、知り得ない奴は情報学部にいる価値がないので、大学入り直した方がよいと思う。

特に、ウェブリテラシーが大事(p209)というくだりは、特に放っておけば技術をあまり覚えずに卒業してしまうIDカリキュラムの学生に是非読んで欲しい。

情報学部、特に情報社会学科といったような組織は、そもそも情報技術が社会に与える影響が深刻なんじゃねえか?という問題意識から出来ていると思う。
そういう意味で、ウェブ、インターネットが我々の働き方や知的な生活に与える影響をわかりやすく論じたこの本は是非読んでおくべき。

個人的にはスモールビジネスについて触れられていたのが印象的でした。
大学で会社を作るというと、「ベンチャー」としか理解されえないわけですが、学生時代の自由さや体力を考える(生活費は親持ちの人が多いわけで事実上無リスク)と、学生時代に小さい会社で、自分の好きなことでお金を作ったりすることが重要だという私の考えに近いので。もちろん簡単ではないですが。

さて、先日カリキュラムを語る会がありましたね。
その環境を作ってくれた学生諸君には大変敬意を表するし、自分自身の環境を自分たちで改善しようとする努力はすばらしいことだと思う。
だが、将来有望な君たちが語る対象としての「カリキュラム」という言い方はいささか物足りない、という思いが強い。

この本は、どうして私がそのような思いを抱くかについても、わかりやすく書いてくれている。

部分的に引用すると、
「時代の変わり目を意識していちばん気をつけなければならないのは、優等生たちだ。(略)優等生ほど心の中に「古い価値観」がきちんと刷り込まれているということだ」(p198)

私にとって古い価値観とは、授業の履修こそが大学では重要だという優等生的な香りのする考えである。(いや、言い切ってしまうといろいろ怒られそうだが。)

一方、この本の前半にあるように、知の高速道路が準備されており、志向性(好きかどうか)こそが重視されるのが情報学の対象とする領域であると私は考える。
さらにウェブを取り巻く環境の中に、新しい職業が続々と生まれていると言うこともその次の章にある。(p206)私は情報学部のような新しい学部は、新しい職業に対応することが宿命だと思っているので、もっと「けものみち」の可能性について考えてもらいたい。そして、自分の適性を最大限に活かして、情報学(私にとってはウェブの世界)をもっと豊かにするような仕事をして欲しい。

その上で、あえて言うとすれば、情報学部は本来、これから発生する新しい職業に対応したカリキュラムを考えなければならない。それは教員としても考えていくし考えている。
反面、1学年200人という小さい学部ではあるが、同時に200本もの「けものみち」を束ねるカリキュラムなどというものは存在するのだろうか、しかもそれを学部の限られたリソースで?と問わざるを得ない。

ところで、高速道路を走るためには、学生一人一人の志向性や自助の精神が必要というのが梅田の答えである。それは、一人一人が状況に応じて持つべき志向性であり、事前に計画することは出来ない。学則に縛られたカリキュラムを改訂できるのは数年かかる。どうしてもカリキュラムというのは後追いであり、いまの激変する環境で君たちを激しくリードするべき存在としては頼りないと言うことは理解して欲しい。

そのような大学を取り巻く環境が大きな変化にさらされている中で、あえてカリキュラムというのは語るべき対象なのだろうか。いや語らないより語った方がよいのだが、もっと語るべき対象が他に存在する気がしてならない。

さて、そんなことを私が言うまでもなく、語る会をきっかけに、なにやら一部で勉強会が行われるらしいですね。
実に、そっちは大変期待しています。皆さんがそれぞれ、「何を」勉強したいのか?という志向性が明らかになると思いますので。

では。